2015年10月23日
企業の存続危機に発展するかも!?Twitter炎上事例からわかるリスクの実態とその対策
◆企業におけるTwitterの役割と巨大なリスクとは!?
最近は、企業が自社アカウントを取得し、Webメディアの戦略としてTwitter、Facebook、ブログなどを運営するケースが多くなってきました。必要なときに瞬時に情報発信が可能なこれらのツールを入口として、自社サイトに呼び込む戦略が功を奏し、売上アップを実現しているケースが見受けられます。
しかし、喜んでいる企業ばかりではありません。特に、140文字で簡単につぶやけるTwitterは、その伝播性、速報性から巨大なリスクが潜んでいます。
これまでにも、たったひとつの発言が、一気に企業を存続危機にまで追い込んだケースが発生しており、企業のSNSの運用を担当する者は、この事実を十分に把握したうえで事前対策を行っておく必要があるでしょう。
しかし、炎上が起こる原因は、企業・法人に所属する従業員(社員・アルバイト)によるもの、ユーザーや消費者による企業(その商品など)批判によるものがあり、特に従業員による原因は、下記の通り実にさまざまです。
・ツールの特徴・規則の理解不足
・暴言
・うっかり発言
・悪ノリ・非常識
・不注意による操作ミス
・なりすまし
・想定外の炎上
・その他 など
そこで、その実態を把握するために、"従業員などの発言によるTwitter炎上事例(2014年~2015年発生)"をピックアップ。その背景・原因なども合わせてご紹介します。
◆Twitter炎上事例と原因
【事例1】楽天トラベル公式(@RakutenTravel)
/2015年9月18日
<背景>
楽天トラベル公式アカウントが、柴田淳さん(歌手)に対し「ぶさいく」とツイート。
柴田さんは、上記ツイートを受け、個人のアカウントから「楽天に公式でブサイクと言われちゃった(涙)」とツイート。
⇒ 原因:楽天トラベルが現在調査中
<対処方法>
楽天トラベルは、同日に謝罪文を発表。その中で「該当のツイートは弊社の見解を示すものではございません」と自社の公式発言であることを否定し、現在調査中であることを伝えました。
問題発言のあった公式アカウントがつぶやく内容は、そのほとんどが商品のキャンペーン情報など。そのため、今回は悪意やなりすましによるツイートである可能性が大きいケースといえますが、真相は、自社内での調査結果の発表を待つしかなさそうです。
【事例2】NHK「日曜討論」公式(@nhk_touron)
/2015年9月13日番組放送前・後
<背景>
NHK「日曜討論」公式アカウントが、「反対意見って理解しにくいのに、賛成意見はすごく頭に入やすい」と安保法案の番組直前・直後にツイート。
上記ツイートに対し、安全保障関連法案に対する反対意見をNHKが批判したとした炎上。さらに放送後、「機は熟している」とツイートしたことで再び炎上。「廃案にする機」という意味を「可決の機」と受け取れるような書き方をしたことに批判が集まりました。
⇒ 原因:うっかり発言
<対処方法>
番組終了後、同アカウントは、「自分の意見と違う人の意見は耳に入りにくく、同じ意見だと理解しやすいと言う意味で書いたのですが、『賛成』『反対』反対という言葉を使ってしまったので、法案に『賛成』『反対かのように誤解された方もいたようです」と釈明し謝罪。
放送後のツイートについても、「『(採決の)時機は熟している。...否決し廃案にするしかない』と番組で述べています。そのことが印象的でした」と誤解であることを主張しましたが、採決間近のタイミングでの発言としては不適切である、と多くの方が判断したようです。
【事例3】ディズニー公式(@disneyjp)
/2015年8月9日
<背景>
ディズニー公式アカウントが、原爆投下の日に「なんでもない日おめでとう。」とツイート。
1945年、長崎に原爆が投下されたのと同日に、上記ツイートが投稿されたことに対し、不謹慎極りないと多くの批判が寄せられました。このセリフは、映画「ふしぎの国のアリス」におけるシーンで歌われる歌詞の一部(日本語訳)。
たまたま送信したと思われるこの日、各地では長崎原爆に関するニュースなどが放映されたり、イベントが行われたりしており、決して「何でもない日」などではないことは明白。さらに、「おめでとう」というふさわしくない言葉がフォロワーを不快にさせ、炎上しました。
⇒ 原因:うっかり発言
<対処方法>
ディズニー公式アカウントは、投稿から6時間後にこのツイートを削除。「不適切な日時の投稿で、不快な思いをさせてしまい、申し訳ない」と謝罪しました。
【事例4】りそな銀行行員の娘の個人アカウント
/2015年6月8日
<背景>
銀行行員が娘に、来店した芸能人個人情報を漏らし、娘がツイート。
りそな銀行中目黒支店の行員が、関ジャニ∞の大倉忠義さんの個人情報を娘に漏らし、その娘が「母が帰ってきたら大倉くん情報たくさん頂こう。住所はざっくりとはさっき電話で教えてもらったし」「この前母は西島秀俊さんの免許証顔写真のコピーをとってきた笑」などとツイート。
重大な個人情報漏えい事件として炎上しました。同行員はその他にも、SMAPの中居正広さんが来店したという情報も娘に漏らしていたようです。
⇒ 原因:悪ノリ(非常識行動)
<対処方法>
ツイートした20歳の娘はアカウントを削除しましたが、娘と情報を漏えいした母親の個人情報がネット上で公開されてしまうという事態に。一方、りそな銀行は翌日、正式文書を発表し「現在、事実関係については調査中ですが、調査結果に基づき、厳正に対処してまいります」などと謝罪しました。
【事例5】ディー・エヌ・エー従業員になりすました個人アカウント
/2015年3月3日
<背景>
「現在は渋谷のヒカリエの某DeNAなる会社で統括的なお仕事なう」と記載されたプロフィールを持つ個人アカウントが、誹謗中傷する発言をツイート。
上村さん殺害事件(川崎市)においてフォロワーと言い争いになり、「在日/...ガチホモ...くんよ~ お前らノウノウと税金で刑務所暮らしだろ?」「在日基地外火病犯罪者の戯れ言w」などと発言し、炎上。
⇒ 原因:なりすましの可能性
<対処方法>
個人アカウントのプロフィールには、本名などが書かれており、その情報が拡散。現在、プロフィールなどが修正されアカウントは非公開になっています。一方、ディー・エヌ・エーは、「プロフィール上の情報を元に調査したところ、弊社の従業員ではないことが確認できましたのでお知らせいたします」と公式Twitterアカウントにて発表。真実は不明ですが、従業員への「なりすまし」の可能性が高いといえるケースでしょう。
【事例6】SQUARE ENIX社員個人アカウント
/2015年2月20日
<背景>
パズドラの新キャラ登場に対し、スクエニ社員が「パズドラの時代も変わったので、CDコラボキャラのスキル上げ全員できるように無理言って対応していただきました(^_^)」などとツイート。
「パズドラ」の新キャラ「曲芸士」が強すぎてゲームにならない、というパズドラユーザーは、上記の「無理言って対応していただきました」といったスクエニ社員(ディレクター)がパズドラを終わらせたとして炎上し、この社員が攻められるという事態に。
⇒ 原因:想定外の炎上(うっかり発言)
<対処方法>
パズドラを配信するガンホー・オンライン・エンターテイメントは、自社サイトにて「ゲームバランスに深刻な影響はないと判断しておりますため、本リーダースキル内容を下方修正することは予定しておりません」とコメントしました。
【事例7】モスバーガー飯田橋東店のアカウント
/2014年12月
<背景>
「遅刻を何度もする中国人の女の娘に「今度遅刻したらお前の背脂でラーメン作るぞ!!」遅刻しなくなりました」と書かれた店頭の黒板の画像をTwitterに投稿。
ウケを狙ったプロモーションのつもりだったのかもしれませんが、人種差別につながる表現が反感を買い炎上。店舗だけでなく、モスバーガー公式Twitterアカウントや本部にも電話よる苦情が殺到しました。
⇒ 原因:悪ノリ(ヘイトスピーチ)
<対処方法>
モスバーガー飯田橋東店は、黒板を撤去。本部は、「極めて不適切な内容が記載されていた事実が確認されました。人や国を中傷する表現であると深く反省しており、チェーン本部である弊社の管理責任であると重く受け止めております」というお詫びの文書を公式サイトに掲載しました。
【事例8】書泉グランデ公式(@shosengnd)
/2014年9月23日
<背景>
書泉グランデ公式アカウントが、書籍のPRで「隣国が嫌いな方、なぜ嫌われているのか気になる方や、植民地支配、戦勝国気取り、領土問題、反日、それらについて疑問をお持ちの方にオススメです」とツイート。
桜井誠氏(政治活動家)の新刊「大嫌韓時代(青林堂)」をPRするためにツイートした内容が、ヘイトスピーチであると批判され炎上。
⇒ 原因:悪ノリ(ヘイトスピーチ)
<対処方法>
同月26日、書泉グランデは、この投稿を削除し、公式サイトにて「特定の主張を支持するかのような表現がありましたことは、様々な思想を扱う知識の場である一書店として、決してあってはならないことと考え深く反省しております」と謝罪文書を掲載しました。
【事例9】タワーレコード広島店アカウント(@TOWER_Hiroshima)
/2014年8月25日
<背景>
タワレコ広島が一般ユーザーに対し、リプライ送信および、公式リツイート。
タワレコ広島のツイートを引用し、「怖」という1文字をツイートした一般人に対し、「応援は怖いですか?」とリプライしたタワレコ広島。さらに、別の一般人の「タワレコ広島店が〇〇さんに執拗に絡んでてゾッとした!コワ!」というツイートを公式リツイート。
その他にもツイートが繰り返されたため、多くのユーザーが、タワレコ広島店にツイッターを私物化しすぎていると指摘。その他の一般人もやりとりに加わる中、タワレコ広島店は「脅迫罪としてこちらのtweetも記録させていただきます」などとツイートが激化し炎上。
⇒ 原因:ツールの特徴・規則の理解不足
<対処方法>
ユーザーとのやりとりにおいて感情が高ぶり、正しい判断ができなくなったケースといえるでしょう。店舗のアカウントを個人アカウントのように使用している事例です。このあとタワレコ広島店は、Twitter上でこの件について謝罪しました。
【事例10】スーモ公式(@suumo)
/2014年4月14日
<背景>
不動産・住宅などに関する情報サイトsuumo(キャラクター)が、「社畜さんいわく 残業のことを「二次会」って言うんだって そう言うとなんかすごく楽しそうな感じがするねっ 二次会がんばって!ぼくはもう寝るよ~ おやスーモ」とツイート。
⇒ 原因:うっかり発言
<対処方法>
公式アカウントにも関わらず「社畜」という言葉を使用したことを不適切であるとユーザーが指摘。スーモ公式Twitterは投稿を削除、「投稿内容の不適切な表現により、ご不快な思いをおかけいたしました」と謝罪しました。
◆考察まとめ
今回ご紹介した実際の事例を見てみると、不用意な、あるいは常識に欠いた「失言」によるものが多いようです。仮に軽い気持ちで書いた内容だったとしても、一度発信した情報は、瞬時に世界中に発信され、後悔したときにはもはや完全に消し去ることはできません。
このようなネットの常識を知っていたとしても、「ついうっかり」「何気なく」というちょっとした油断から、炎上ネタを書き込んでしまうことも少なくないのです。中には常識を持ち合わせていれば回避できた事例もあり、個人の認識の甘さに対する事前対策が必須といえるでしょう。
まずは、公式アカウントで発信する際のSNS運用担当者の人選を、慎重に行う必要があります。必ずしもSNS経験者である必要はなく、個人のホスピタリティを最優先するとよいでしょう。
また、企業アカウントではなく個人のアカウントによる情報発信により炎上した場合も、企業に影響が及びます。最近は、鬼女(2ちゃんねる内に存在する用語で、個人情報の特定などを行うアカウント・ユーザー)などが存在し、発言者の務める企業名が特定され暴露されるケースでの炎上も増加しており、全従業員に対する指導が必要です。
もちろん、採用基準をアップすることも大切ですが、優秀な人材を採用したからといって100%リスクを回避できるとは限らず、問題解決にはなりません。実際に、個人ブログでエリート社員が炎上を起こす事態が発生しており、成人に至るまでの学校や家庭教育に頼るのではなく、自社で教育なり、指導なり、独自の対策を取っていくことが重要でしょう。
さらに、問題が起きたあとのことを想定し、どのように対処するのかをある程度決めておく必要があります。早急、かつ慎重な対応が求められますので、問題発生後に1秒でも早くその問題を鎮火させることを考えましょう。
[炎上の際に行うべきこと例]
・上司や責任者に相談をする
・対応を決める(例:問題となる情報の削除、SNS企業アカウントの停止、静観など)
・謝罪等が必要な場合
・情報発信者である従業員の解雇及びその発表
・電話問い合わせなどの対応
・記者会見を開く
・自社ホームページ、SNSの対応 など
[日頃の対応例]
・SNS担当者の慎重な人選
・社員・アルバイトなどの教育
・就業規則・企業ガイドラインにおける守秘義務の徹底
・社員、アルバイトなどの誓約書への署名
・SNSに関する「NG」基準の作成、及び徹底
・SNS監視体制の強化
炎上を全て防ぐことは至難の業ですが、それを回避する対策を取ることで、ある程度被害を防いだり、いざ炎上したときの備えを強化したりすることができます。ぜひ、参考になさってください。
- by 佐藤司
- at 18:00